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映画『国宝』

映画 国宝

大ヒット中の映画『国宝』。

歌舞伎の美しい映像と音楽。
スクリーンいっぱいに広がる色彩と旋律、そこから漂う張りつめた緊張感と切なさ。
久しぶりに「見応えのある映画」を観た、という充実感に包まれました。

ネタバレになるかもしれませんが……どうしても書きたい。

私が一番心を掴まれたのは、後半、「曾根崎心中」の舞台。

徳兵衛(喜久雄)が、壊疽になったお初(俊介)の右足に頬ずりするシーンです。

指先が黒ずみ、病が進行していることに俊介自身も気づいている。
それでも徳兵衛は、その足にそっと頬を寄せる。

そこにあったのは、もはや同情やあわれみではありません。
痛みも、絶望も、運命さえも丸ごと抱きしめるような「深い愛」。

死を覚悟して踊る俊介の執念。
その想いを成就させてやりたいと願う喜久雄。
二人の迫力ある演技に、思わず体が熱くなりました。

歌舞伎の世界は「血筋」が重んじられる世界です。
名跡、家、伝統――それらは簡単には越えられない壁。

その血筋を継ぐ側の権威である万菊が、喜久雄を受け入れ、許した。
そこには、単なる情ではなく、芸に対する真実の評価と、伝承への強い意志があったのではないでしょうか。

「才能か、血筋か。」

俊介の命を賭けた選択は、
「芸の命脈は血を超えて繋がれることもある」
そう静かに、しかし強く訴えていたように感じました。

まだご覧になっていない方は、ぜひ大スクリーンで。
あの緊張感と切なさは、映画館でこそ味わえると思います。

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この記事を書いた人

旅に出て土地に流れる時間に耳を澄ませ、歴史の面影を今に伝える風景や文化を訪ね歩いています。近江の歴史を中心に、史料や文学にも親しみながら、各地で出会った風景や物語、人々の営みを書き留めています。地域に息づく記憶や文化の魅力を静かに綴る、旅と歴史の記録です。

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