大ヒット中の映画『国宝』。
歌舞伎の美しい映像と音楽。
スクリーンいっぱいに広がる色彩と旋律、そこから漂う張りつめた緊張感と切なさ。
久しぶりに「見応えのある映画」を観た、という充実感に包まれました。
ネタバレになるかもしれませんが……どうしても書きたい。
私が一番心を掴まれたのは、後半、「曾根崎心中」の舞台。
徳兵衛(喜久雄)が、壊疽になったお初(俊介)の右足に頬ずりするシーンです。
指先が黒ずみ、病が進行していることに俊介自身も気づいている。
それでも徳兵衛は、その足にそっと頬を寄せる。
そこにあったのは、もはや同情やあわれみではありません。
痛みも、絶望も、運命さえも丸ごと抱きしめるような「深い愛」。
死を覚悟して踊る俊介の執念。
その想いを成就させてやりたいと願う喜久雄。
二人の迫力ある演技に、思わず体が熱くなりました。
歌舞伎の世界は「血筋」が重んじられる世界です。
名跡、家、伝統――それらは簡単には越えられない壁。
その血筋を継ぐ側の権威である万菊が、喜久雄を受け入れ、許した。
そこには、単なる情ではなく、芸に対する真実の評価と、伝承への強い意志があったのではないでしょうか。
「才能か、血筋か。」
俊介の命を賭けた選択は、
「芸の命脈は血を超えて繋がれることもある」
そう静かに、しかし強く訴えていたように感じました。
まだご覧になっていない方は、ぜひ大スクリーンで。
あの緊張感と切なさは、映画館でこそ味わえると思います。

